『ベター・コール・ソウル』徹底して描かれる二面性。好きだわ〜コレ。

史上最高のドラマと名高い『ブレイキング・バッド』(以下『BB』)のスピンオフ作品。

『BB』と同じヴィンス・ギリガンが製作総指揮、原案、監督などを務めており、キャストもおなじみの顔ぶれが揃います。

『BB』でも脚本や監督などを担っていたピーター・グールドという人が、ギリガンと製作総指揮に一緒に名を連ねています。

主人公は『BB』に出てきた犯罪者の味方のどこかチンケな弁護士、ソウル・グッドマンの6年前の姿から描かれていきます。

私は昨年2019 年(遅い)に『ブレイキング・バッド』を完走したあと、感動と興奮のあまりすぐさま映画『エル・カミーノ』を観て、その後この『ベター・コール・ソウル』を観始めました。

観初めてすぐ、そして現在配信している最新シーズンのシーズン4まで観終わったあと、同じことを強く思いました。それは…

 

モスコ

『ブレイキング・バッド』よりもさらに大好きだコレ!!
最高のドラマをさらに最高に上塗りしてきたぞー!!

 

そう、この作品の魅力に非常にやられてしまったのです。

この『ベター・コール・ソウル』には不思議と胸を打つものがあります。

『ブレイキング・バッド』は麻薬カルテルやDEAなどハードな犯罪の描写も多く、人が犯罪に染まっていく様をダークに描いていましたが、こちらはより、”人間”にフォーカスを当てており、人はなぜ犯罪を犯すのか、どういう風に堕ちていくのか、その様をじっくりと描いており、むしろ『BB』よりも考え様によっては怖い作品であるかもしれません。

犯罪心理描写としてより深く、犯罪とは?法律とは?正義とは?というところを登場人物たちを断罪せずに、際どいところをあぶり出す形で描かれています。

そしてこちらの方がユーモアやペーソスがたっぷりとあるんですね。

泣き笑いしたくなるような、そんな人間ドラマなんです。超好み。

『ブレイキング・バッド』に出ていた登場人物たちがより人間臭いので、失敗も犯すし、落胆もするし、ヤケにもなるし、だけどなんとか踏ん張ってやっていっている。

『BB』の世界が「壊していく/壊れていく」世界なら、こっちは「なんとか踏ん張る/でも堕ちていく」世界。

時間軸はあの『ブレイキング・バッド』で観た世界にどんどん近づいていっている。

『ブレイキング・バッド』の前日譚(6年前)なので、あの世界との違いがあればあるほど、どうやって変わっていってあの世界でのああいう人間になるのか、ああいう状況になるのかといったスリルを味わいながら観ることもできて、『BB』が好きな人にとっては二重にも三重にも楽しめる作品になっていると思います。

しかもその設定にまったく無理がないどころか、唸らされるほどの納得の嵐で、「だからか!(切ない!)」とか、「だからか!(わはは!)」とか、いちいちすごい。

スピンオフ作品の鏡のような作品だと思います。

ジミー・マッギル役:ボブ・オデンカーク

まずこのおでん…もといボブ・オデンカーク、この人の演技がこの作品の屋台骨となっており、その軽妙で人好きのする感じがもうなんとも上手いのですよね。

例えば、声。この人の声や喋り方が独特の持ち味があり、妙〜〜〜にクセになってしまうんです。

ソウル・グッドマンはもともと、本名はジミー・マッギルといい、詐欺師から立ち直り、苦労して弁護士になった男です。

しかし弁護士になったあとも、冷たい世間や、とりわけ血を分けた兄にクソミソに扱われていることにより、弁護士とペテン氏の間を行ったりきたりするのです。

そのペテンをやっている時や、ペテンまがいの弁護でまくし立てている時の、そのべしゃり。

身振り手振り、声の高低の調整、人の真理を覗き込む様な、でも愛嬌がどこかある、といった表情などが実にイキイキとしており、気がつきゃ作中でジミーに騙されている人物たちと同じうように、私たちもまた喜んでジミーに騙され、魅了されるような始末なんです。

人を騙して金を巻き上げる、いわゆるスティングをやる人はかくも魅力的なんですね。

ジミーの兄、チャックがジミーのことを人に説明する時、どこまでが本気かわかりませんが「あいつは根はいいやつなんだ “Good hearted”」みたいなことを言いますが、まさにそんな感じ。

ただの冴えなさそうな胡散臭いおじさん(失礼。私はめっちゃ好きなルックスです)に、みーんな気がつきゃ協力してるし、味方してるし、応援してる。

そんな人物を好演しているオデン(そんな略し方、向こうでは絶対ない)ですが、彼のすごいところは、シリアスな演技もまた恐ろしくシリアスにこちらに響いてくるところです。

このポスターがジミー/ソウルのその二面性をよく物語っています↓

劇中、わりと心理的にヘビーな描写もあるのですが、観てて息が詰まりそうなほど見事にリアルに演じています。

キム・ウェクスラー役:レイ・シーホーン

そんなジミーのことを一番近くで見てて、心配しながら少し呆れながらもいつでも全力で彼の味方になる友人/恋人のキム。

彼女の描き方も、これまた興味深く目が離せない感じなんですよね〜。

キムはかなり優秀な弁護士で倫理観も高い。

なのになんどもちんけな犯罪に手を染めるジミーをほっとけない。

ひとつは彼が兄から受けていた呪縛のようなものを理解していたからなんだと思います。

ジミーの兄・チャックは子供の時から、ジミーのことを心の底では認めていません。

ジミーが兄・チャックの背中を追い、更生して弁護士になってからも、チャックは表面上は応援していたのですが、それがただのポーズだったことがわかった時(直接ヒドい言葉を言いやがる)の、ジミーの心の傷を誰よりもわかってやれていた人物がキムなんですね。

なので、チャックに対して「あなたがジミーをダメにしているんだ!」とキムがぶちまけた時、溜飲がさがり、相当なカタルシスがありました。ああいう超エモいシーンがあるからこそ、こっちの作品の方を贔屓したくなるんです。

人のことでそれだけ一生懸命になれるキムはとても魅力的な人物なんですが、彼女はなぜそれほどまでにジミーの味方になれるかというと、もうひとつにははジミーになんやかんや言うても、かなり惚れているんですよね。

もうなんども同じことを繰り返し、今度こそ呆れただろう、別れるだろうと思いながら観てても、キムはジミーの手を実に離さない。

これがね、今までのドラマであったかなっていうくらい、強固なもので。

理由としては、惚れてるってことしかないってのがまたね、いいんですよね。

個人的にも、ケンカした後許してもらうために、毎朝電話の留守電にオリジナル・ラジオ番組形式でミュージカル映画のクラシック『南太平洋』の歌をおバカに歌ってくれる男(来週は〇〇特集です〜お楽しみに〜の予告付き)、好きにならずにいられないですけどね笑

あとシーズンが進むにつれ、ジミーの悪行にキムも加担することが増えたりするのですが、彼女も基本的にはイージー・ゴーイングというか楽しいことが好きで、少々悪いことでも、ユーモアや楽しさが勝てばOKみたいな資質があるんです。気取ったことも嫌いなんでしょうし。

私がこのドラマを特別に思う理由の一つに、やはりこのジミーとキムのリレーションシップの描き方に魅入られているところがあると思います。

愛し合っているだけではなく、シーズン4にもなると、いろいろなことが重なり、2人の気持ちにすれ違いが見て取れるのもすごく切ないです。

それでも、なんどもなんども世間にメタメタにやられたりしては、そのたびに、お互いを思いやりながら力になる様には、グッとこずにはいられません。

ただもう少し腹を割ってよく話し合って、で、結婚して平和に暮らしてくれー!

って、それができてりゃ『BB』のようにならないの!(´;ω;`)

『BB』にキムが出てこないのがすごくすっごく不安材料です。

Bob Odenkirk as Jimmy McGill, Rhea Seehorn as Kim Wexler – Better Call Saul _ Season 3, Episode 6 – Photo Credit: Michele K. Short/AMC/Sony Pictures Television

マイク・エルマントラウト役:ジョナサン・バンクス

Jonathan Banks as Mike Ehrmantraut – Better Call Saul _ Season 4, Episode 1 – Photo Credit: Nicole Wilder/AMC/Sony Pictures Television

出たーマイク〜!

彼は『ブレイキング・バッド』でもかなりの好演で人気を博していたので、彼の登場には世間も沸いたでしょうね。もちろん私も大喜び。

またあのマイクが観れるんですもんね。

あの声、あの顔、あの姿!

彼は基本、表情に乏しく、感情的になることもありません。

ただ、そういった彼の心情は決して見えないわけではなく、慎重に観ていると、どことなく見て取れてわかった時には非常にほっこりするんですよね。

たとえばいつものおなじみの朝食食べるダイナー的なとこにジミーを呼ぶのは、彼に対して随分心を開いているということ、みたいな。

最後の方に、”Take It Easy…” と、心配すらしてましたからね、ジミーのことを。彼の感情が垣間見れるのです。

彼の人となり、仕事の進め方、人の選び方など、マイクの流儀や心情を『BB』の時より、さらに詳しく観れて人間的な部分を感じることができて興味深くもあり、嬉しくもあり、なのです。

グスタボ・”ガス”・フリング役:ジャンカルロ・エスポジート

そしてこの人もまた観たかった1人!ガス!

ファースト・フード店、ロス・ポジョスが出てきて「おゎっ」とソワソワしているところに、なんかうしろの方でモワリと黄色いシャツのおじさんが写った時は鳥肌立ちそうに!

犯罪時のスタイリッシュさが、『ブレイキング・バッド』の時より薄い気もしますが、それはこれからのシーズンに期待ですね。彼の怖さはまだまだ出てませんししね。

彼の印象的だったシーン。

「ロス・ポジョス」にカルテルの男たちが来て、一般人である店員たちを脅します。

翌日、店員たちにどういったことかと訊かれ、ガスは説明するのですが、それがまたまぁ見事な作り話で、店員たちも納得するどころか感激して拍手し、士気を高めるといった場面がありました。

その際のガスの、カルテルの重要人物ではなく、ファースト・フード店のオーナーとしての完璧な振る舞い具合に、詐欺師と弁護士を天秤にかけているジミーの姿がダブりました。

この作品は、ジミーだけでなく、マイクもよきおじいちゃんと、裏の世界の用心棒、ガスはファースト・フード店のオーナーと麻薬カルテルのドン、ジミーの兄・チャックは凄腕の尊敬される名弁護士と、心を病み引きこもっている弱き人、といった2つの異なる世界を持つ、二面性のある登場人物を徹底して描きます。

どちらが表、裏、というのは表面上はあるかもしれませんが、本人たち的にも、どちらも自分、という複雑な人物たちなんですね。

ガスはそんな登場人物たちの中でも。2つの世界の振り幅が一番大きい人物かもしれません。

チャック(チャールズ)・マッギル役:マイケル・マッキーン

そしてチャックですよ、チャールズ・マッギル。ジミーの兄ちゃん。

この人がねえ、とんでもない曲者でねぇ。

でもねぇ、この人も、というかこの人こそ一筋縄ではいかない、「悪者」って簡単に割り切ることのできない人物なんですよね。

確かにジミーに言ったある言葉はひどいけれど、それまでのチャックにはチャックなりの人生があって、その中でのジミーに対する嫉妬なり苛立ちなり愛情があったということが端端に挟まれて納得できるんですよね。

なもんでチャックとジミー、どちらが先に相手を欺いていたとか、もうそういったことではないし、どっちが正しいとかはもう全然わからないのです。

家族あるあるというか、全然違った性質の兄弟あるあるというか。そういう類の悲劇がこれでもかって描かれて。

まぁとにかく銀色のアルミホイルみたいなものに自らを包んでいる中年オヤジの悲哀たっぷりの姿はそうそう忘れられるものではありませんね。

その他の魅力的な登場人物たち

学生の撮影クルー

この時のジミーの格好が『ジョーズ』を撮ってる時くらいの若き日のスティーブン・スピルバーグみたいでちょっと胸熱でした!

こんな感じで実はこの作品には映画のオマージュに溢れているんです。

ジミーとキムがまず映画好きっていう設定なのもうれしい。ワーカーホリックなキムのうさの晴らし方がブロックバスター(時代)でビデオをアホみたいに借りまくって見まくることってのがいいんですよねぇ。

で、ちなみにこの学生3人組!ナチョやハムリン、ヘクターより記事の先にくるほど私の中は重要人物たち! 笑

こういう子たちが結局手伝ってしまう(間にお金は発生していますが)ところに、どれほどのセコい悪事を働こうとも決して憎みきれないのがジミー・マッギルなのです。

ハワード・ハムリン

ハムりん、なんかビーチ・ボーイズでいうところのマイク・ラブ的な、決して憎めない憎まれ役的な。

イグナチオ・”ナチョ”・バルガ

ナチョ役の人の顔の緊張感がすごい!

例の薬のシーンは余計にドキドキしましたし、ナチョパパとのシーンはより哀しさが増しました。

ヘクター・“ティオ”・サラマンカ

そして車椅子の叔父貴、このヘクターが動いてる!しゃべってる!って嬉しかったんですけど、ほんっとに自由に喋られれば喋るほどにくたらしくて笑

指先だけ動く彼にベルを渡した甥のラロは天才ですね。

エルネスト

この人笑。最高。

 

 

『ベター・コール・ソウル』まとめ

人の人生、その流れ、その行方。

あのことがあったから、ああなって、こうなって。

そういったことが説明くさくなく、説得力を持って描ききっているその凄み。

このヴィンス・ギリガンとピーター・グールドの描く世界の人物たちは過去の出来事に感情をかき乱され、影響され、人物たちの行動原理の基礎になったりする力が強いです。

過去のあのちょっとした出来事が影響していたのか、と二重三重に気づく時、このドラマの大ファンになっているのではないでしょうか。

あのすごい世界(『BB』)の横で、またこんなにも豊かな人間ドラマが流れていたのかと思うと、本当に胸が熱くなります。

どんどんジミー・マッギルがソウル・グッドマンの世界に近づき、そしてソウル・グッドマンになっていく世界。

その様はどこかスカッとするようでもあり、また切なくもあり、心配でもあり、悲しくもある。

自分らしくあることが、ちょっとした慢心や綻びが、やがて様々な悲劇を呼び起こすキッカケになっている。

ひとつとして見逃せない、傑作ドラマ、非常にオススメであります!

『ベター・コール・ソウル』シーズン5はいつから見れる?

2020年2月24日に待望のシーズン5が配信されます。

この素晴らしい予告編、期待が高まります。

 

 

この機会に、新シーズンが始まる前にシーズン1〜4を観てみてはいかがでしょうか?

『ブレイキング・バッド』をまだ未視聴の方はそれを先に、というのは言うまでもありません。

サブスクではどちらの作品もNETFLIXで全シーズン配信中です!

お楽しみはこれからだ!

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