『ベター・コール・ソウル』シーズン5 エピソード1 最高のTVドラマの最高の幕開け

『ベター・コール・ソウル』シーズン5 E1 魔術師 “The Magic Man” 見所!

これほどまでに完璧なシーズン・プレミアがありますでしょうか!

たくさん見所がありますので、順に書いていきますね!

白黒のジーン・パートの演出・撮影・編集の素晴らしさ!!

今回のこのジーン(ソウル・グッドマンの逃亡後の名前)のパートが素晴らしかったですよねぇ。

しんしんと静かに降るネブラスカのオマハの雪のように、静かに描写されるジーンの葛藤、焦り、そして新たな決意。

1950年代のB級フィルム・ノワールを思いこさせるような、犯罪の匂いがぷんぷん薫ってくるスタイリッシュな白黒のパキッとした映像と、潜んでいるモールの日常の描写のコントラストも抜群なんですよね。

今回、ジーンが初めて能動的に動き出したし、熱い思いも感じられたので、今後の展開に超期待です。

いやぁそれにしても見事な撮影だなぁ。うっとり。

ロバート・フォスターの最期の勇姿もちゃんと刻まれています。

 

キムの葛藤

誰よりもジミーの再出発を望み、陰になり日向になり彼を支えてきたキム。

しかしジミーの再出発は、キムの想像を超えたものになります。

曰く、ジミー・マッギルの名を捨て、ソウル・グッドマンに屋号を変える、と。

シーズン5にして、いよいよ、『ブレイキング・バッド』に登場したチンケでうさんくさくて犯罪者の味方のソウル・グッドマン誕生の輝かしい瞬間!

…とはなりませんよね。

我々は、もうキム・ウェクスラーという存在を知りすぎてるんだから。

 

 

家で2人でアイス食べるシーン。

ここのキムからのプレゼントのシーンとか切なすぎてもうダメ…(泣)

カバンに入れられたJMMの文字に、全てはもう遅すぎたのかと絶望さえ覚えるほど、哀しい。

「ジミー→ソウル」なことを、うまく飲み込めないキムに、ジミーは真剣に語ります。

「ジミー・マッギルには戻れない」

「弁護士ジミーは永遠にチャックのダメな弟だ」

そして新しい名前が好きなんだ、新しい世界にいくんだ、と。

「悪いけどよく理解できない」というセリフにどこまでも正直なキムが出ている。

「いいよ、いずれわかる」というジミーに、その後の世界(『ブレイキング・バッド』!)を知っている私たちは震えるしかないという…。

うなされますよね、その持っていき方のうまさに。

 

あとね、この家のシーンでもう1つうなされました。

食後のシーンなのですが、ジミーが食後のアイスの用意、キムがテイクアウトで買ってきた食事のゴミなどをまとめた後片付け、をそれぞれしているんです。

何気ないシーンなんですが…。

これ、いつも、これ、なんです、この2人。

要は、感情に任せた行い(楽しいこと、怒ること、etc…)をやるジミーと、その後片付けをするキム、なんです。

シーズン1のエピソード1のラストから、すでにそのことを象徴してたんですよね。

ジミーがHHMのあるビルのゴミ箱をボコボコに蹴る。キムがそれを片付ける。

そういった1つ1つの、なんてことない描写にも背後も意味もある。

そのことに気づいた時にはゾクゾクきます。

こういったことの徹底振りが『ブレイキング・バッド』〜『ベター・コール・ソウル』の1つの凄さなんじゃないかと思います。

 

切れ者ラロ!

キム以外ではやっぱりラロが面白くなってきましたね。

あのガスの好敵手になれるんだから、たいしたもんです。

きっとサラマンカ家ピカイチの切れ者ですね(他がちょっと…ね 笑)

 

ソウルの初めての営業の場

なんだこの見せ物小屋的ないかがわしさは!(笑)

もう完全に最初からソウル色100%ですね。

髪型まで前髪くるんて上げちゃってるし(笑)

この営業じゃあそりゃあ後にジェシーたちに繋がるわけですよ…。

 

ラストシーンのキムの葛藤

そしてこのエピソードのラストにまた、わたしたちの胸が痛くなるシーンが用意されています。

キムのある依頼人のこれまでの犯歴を鑑みるに、裁判に持ち越すよりは検察の刑期5ヶ月という処分を受け入れたほうがかなりいいという事例が。

子供やもうすぐ生まれてきそうなお腹の赤ちゃんのことを思えばなおさら。

けれども、いくらキムが説得しようが、裁判なら万が一勝てるかもと、裁判に賭けるという依頼人とその身重の妻。

ここでソウル(もうジミーとは呼べない男に完全になっている…)がある提案をします。

依頼人をだませばうまくいくと。ここ、キムが最近一番遅れていたことなんでしょう。顔も体も強張ったキムはかたくなに拒否。しかしソウルと別れたあと、その嘘をつき、結果あっさり刑期5ヶ月を受け入れたのです。

キムが望む道義的な結果を得るためには、ソウルが提案した「嘘」を依頼人に付かなければならなかった。

この矛盾、ですよね。

あとは、この依頼人の「確実な短い刑期」で罪を精算するよりも、ギャンブル的に裁判で勝ってチャラにしたいというような浅はかな考えのようなものが、どこかジミー/ソウルにも時々見えること。

つまり犯罪者とジミーがダブって見えること。

もう一体何が正義やら、自分が愛していた男の薄々とは感じていた正体が見えてきたような、なにがなんだかわからなくなってしまう混乱する世界。

自分でも依頼人を騙すなんてことしたくない、でも普通に話すだけでは決してわかってはもらえない、いや、わかろうともしないのだ、このあまり何も考える事なく軽犯罪を繰り返してしまうような人間たちは、という現実。

モラル的には決して正しくないソウルのやり方が、実際の正義をもたらしているという矛盾。

そこに負けて、そちらに流されてしまった自分に、混乱し、動揺するキムの姿で終わる、なんとも切ないラストなんですよねぇぇぇ!

ものすごく息の詰まるような緊張感溢れる描写の連続でした。

何度かジミーのだましに付き合って楽しんだキムのツケ、みたいなものが一気に押し寄せてしまったとも見て取れるし。

そのことにキム自身が気づいて、そのことの思ってた以上の恐ろしさに打ちのめされたようにも感じ取れるし。

と同時に、ジミーがソウルに完全になってしまった恐ろしさもグイグイわかってしまってきていそうだし。

キムがどんどん追い詰められていっていることを象徴するようなラスト。

かなり心かき乱されるものの、大変素晴らしいラストでした。

 

というわけで、こんな完璧なシーズン・プレミアは今までなかったんじゃない?ってくらい全てのシーンが素んんん晴らしい、エピソードで。

とにかく全てにおいてすごい、その中でも一番光り輝いていたのが、キム・ウェクスラーを演じるレイ・シーホーンの演技だと思います!!

彼女はすごい!!

いよいよ大団円(シーズン・ラストは次のシーズン6だとのアナウンスあり)に近づいてきた緊張感がたまりません。