『ビッグ・リトル・ライズ2』メリルのモンスター振りがすごいです。胸打つ傑作。

1話目、2話目を観ている時は、エミー賞やゴールデン・グローブ賞などなど数々受賞したあの素晴らしかったシーズン1は超えられないかな?などと思いましたが甘かった!

全7話という比較的短いヴォリュームですが、6話、7話と最終話に進むにつれ、エモーショナルな求心力が凄まじく、特に最終話の第7話は観ていて涙が止まらなかったほど、相当なカタルシスがありました。

観てよかったですっ!

原題:Big Little Lies Season 2

製作総指揮・企画・脚本:デヴィッド・E・ケリー

監督:アンドレア・アーノルド

放送チャンネル:HBO

 

あらすじ

カリフォルニアの高級住宅街を舞台に、偽りに彩られたママ友たちの赤裸々な裏の顔、嘘に潜む悪意、結婚生活のもろさをファッショナブルに描くクライムミステリー。

モスコの採点

『ビッグ・リトル・ライズ2』
(5.0)
モスコのひとこと

女優陣の演技は、メリル投入の相乗効果で熱い火花の散らし合いがさらに激しい!

そしてなにより素晴らしいのは、デヴィッド・E・ケリーの魂揺さぶりまくるエモーショナルな脚本!

リトルだけどビッグな嘘を、ライトなテイストだけど重厚に描いた傑作です!

 スタッフ・解説

スタッフ

  • 製作総指揮 ・企画・脚本:デヴィッド・E・ケリー
  • 監督:アンドレア・アーノルド

製作総指揮、企画、脚本はデヴィッド・E・ケリー。

いわゆるこの作品のショーランナーですね。

『アリー my Love』(1997-2002)、『ザ・プラクティス ボストン弁護士ファイル』(1997-2004)、『弁護士ビリー・マクブライド』 (2016-)など、弁護士/法廷もののドラマが得意な脚本家/プロデューサーで、一番よく知られている作品は『アリー my Love』だと思います。

私は日本での放映時にこの『アリー〜』の大ファンになり、その仕掛け人であるデヴィッド・E・ケリーの熱心な信望者になったのですが、その一番の理由に、彼の作品が持つ、観る側の魂に語りかけるその魔法というのか強い力、これに尽きます。

彼の作品はどこかナイーブな、ゆえに不安定で危なっかしいはみ出し者、“I’m Not OK”な登場人物たちの生き様が描かれることが多いです。

その壊れ加減が時にはユーモラスに、時にはエモーショナルに語られ、”はみ出しものたち”である私たちの心を激しく揺さぶり共感と感動を呼ぶのです。

この『ビッグ・リトル・ライズ』のシリーズは原作本もあり、ケリーがその原作をテレビ用に書き直した脚本なんですが、このシーズン2は、その原作から離れたところで、よりケリー色の強い話になっているかと思われます。

曖昧な書き方をしたのは、私はまだ原作を読んでいないので…。

でもデヴィッド・E・ケリーの持ち味は十分に知っているので、そういった部分をこのシーズン2ではより強く感じたからです。その持ち味とは以下のようなもの。

・登場人物たちがあまりに「音楽好き」過ぎるところ。

(もっと言えばみんながみんな通すぎる!でもそこが好きw)

・音楽でさらに言えば重要なモチーフとして『アリー〜』でも使用されていたジミー・ラフィンの ”What Becomes a Broken Hearted” の使用。

・同じくロイ・オービソン曲のここぞとばかりの使用(こちらでは”It’s Over”。『アリー〜』では”In Dream” や “Only the Lonely”など、歌詞が合いすぎていて破壊力抜群!)

・メリル・ストリープ演じる女性が背の小さい人 “Short People”をなじる現象

(『アリー〜』にも同じようなシーンがありました。ランディ・ニューマンの”Shoet People”という曲の歌詞に触発されているものでしたが、ここではR・ニューマンの歌はなしで、ただ偏屈な人を表すモチーフとして唐突に出現。マデリンがなじられちゃうww)

・リース・ウィザースプーン演じるマデリンやローラ・ダーン演じるレナータの『アリー〜』の主人公・アリー・マクビール的振る舞い

(=現実と頭の中が噛み合っておらず、周囲に奇異に映る言動を爆発的にしてしまう振る舞いのこと)

・いわゆる毒親の悪影響の描写

(夫婦喧嘩や離婚、親の癇癪などが子供に与える影響)

などなど。

『アリー〜』ファンなら思わずニンマリするのではないでしょうか。

※以下、ここからネタバレあり

出演者・解説

出演者

  • マデリン・マーサ・マッケンジー:リース・ウィザースプーン
  • セレステ・ライト:ニコール・キッドマン
  • ジェーン・チャップマン:シャイリーン・ウッドリー
  • レナータ・クライン:ローラ・ダーン
  • ボニー・カールソン:ゾーイ・クラヴィッツ
  • メアリー・ルイーズ・ライト:メリル・ストリープ 


セレステ・ライト:ニコール・キッドマン

セレステという女性の持つ繊細さや少々の薄気味悪さ、正義感など、余すことなく見事に演じ切ったニコール・キッドマン

特にそれまでのフラジャイルな不安定さを一変、ラスト近くの法廷での自己弁護の大逆転劇(”It’s My Turn!”)には痺れました。

この輝かしい役者陣の中での彼女の堂々とした演技、素晴らしかったです。

メアリー・ルイーズ・ライト:メリル・ストリープ 

『ビッグ・リトル・ライズ2』に於いて、”モントレー5”に対する最大の障害がこのメリル・ストリープ演じるペリー(暴力夫)の母親、メアリー・ルイーズ。

このメリルが超怖いんです。

息子の死の真相を知りたくて、セレステの家族やその周辺に関わっていくのですが、何が怖いってその「わかってなさ」。

何をわかってないのかと言えば、ずばり自分が犯した罪の重さ、です。

母親として子供に与えた罪、つまり虐待。そこに対する自覚がない。

それ故にペリーが他人(自分の妻含む)に暴力を振るう大人になってしまったこと。この恐ろしさ、罪深さに気づいていない。自分の罪に蓋をし、自分は息子を立派に育て上げた=自分の息子は立派な人物で、人に暴力など振るうわけがないと信じている、その様が恐ろしいのです。

ただし、対する義理の娘セレステの異常性(と言っても暴力の犠牲ゆえにという側面が大きいわけですが)も時に大きくフューチャーされるため、このメアリー・ルイーズの方がまともに見える時もある。

このモンスターなのか、はたまた性格にちょっと問題があるだけなのかというギリギリの線の演技がさすがに非常に上手い。

メリルがこの複雑で問題ありありな人物を嬉々として演じているのがわかりますし、実際素晴らしいです。彼女の演技を観るだけでもこの作品を観る価値があると言ってもいいと思います。

その他の素晴らしい役者たち

ローラ・ダーン。彼女の役は結構カリカチュアライズされすぎていて、ある種コメディリリーフのような、もうイッっちゃってる役なんですが、こういうのがまた非常に上手いんですよね、彼女。

精神的に一番壊れてる役なので、『アリー my Love』のアリーのように法廷で妄想を観ちゃうのも一興です。

ジェーン・チャップマン役のシャイリーン・ウッドリーもよかったですね。

このドラマの中では唯一庶民的なジェーン。

ジェーンのファッション、特にニットキャップやサングラスなどの小物のチョイスがちょっとキッチュな感じで好きでした。

ジェーンの彼氏役コリーを演じるのは『エイリアニスト」の双子の片割れを演じたダグラス・スミスですね。MGMTの人っぽさもあり、キュートです。彼とジェーンのデート・シーンはこの作品の一服の清涼剤役で、癒されます。

リース・ウィザースプーンは主役でありながらこのシーズン2では影が薄かったかな。なんせセレステが主題ですからね、今回。

だけどリースはあのマデリンを安定の”ウザかわいさ”で演じていて、安心できましたw

ゾーイ・クラヴィッツも安定の素敵さ。今回彼女の母親との関係もキーになってくるのですが、見事に演じていました。名前の通り、レニー・クラヴィッツの愛娘である彼女ですが、今後の活躍に期待したいです。

モントレーという土地の魅力

サンフランシスコから南200km、太平洋岸のモントレー湾に位置する美しい海沿いのリゾート地。人口はおよそ27,000人。

サンフランシスコの観光地として有名なフィッシャーマンズワーフもモントレーにあります。私も観光で行ったことがあり、美味しいクラムチャウダーを食べました。

現在も開催されているモントレー・ジャズ・フェスティバルや1967年に開催されたモントレー・ポップ・フェスティバルでも有名なように音楽や演劇なども盛んな文化的な街です。

この『ビッグ・リトル・ライズ』シリーズはこのモントレーの海岸沿いのセレブな豪邸に住む人々の物語なので、モントレー湾の雄大な海のシーンや、街中の小洒落たカフェ、モントレーベイ水族館など、とても魅力的なロケーション・シーンに溢れていて見所の一つとなっています。

また、マデリンがシーズン1で地元の演劇界隈に所属していたりするのも芸術が盛んなこの街らしい描写だと思います。

2シリーズを通して、なんとも暗くて重くて憂鬱な話の展開なこの『ビッグ・リトル・ライズ』なわけですが、なぜこうも観続けてしまうのか?

この雄大な素敵なロケーション、芸術的な素敵なライフスタイルを垣間観ることができる、そこも個人的に大きなポイントでした。

まぁそれゆえに、5人のセレブでおしゃれな生活振りが時に陳腐にハリボテに見えて、皮肉的なレイヤーとして機能もするわけですが、ともかく。

どれだけ暗い展開でも、心が苦しく張り裂けそうな状況でも、モントレー湾の海岸沿いをジョギングしたり、子供を学校をさぼらせて一緒にサーフィンしたりといったその、いつもどこか海の香りがするライフスタイルは、健康的なのか病んでるのかわからなくなるほど、とても魅力的に映ったりするのです。

『ビッグ・リトル・ライズ2』のテーマとは?

この『ビッグ・リトル・ライズ2』のテーマには大きく2つあると思います。

1つ目は「嘘の代償」

2つ目は「親子の呪縛」です。

まず1つ目から見ていきましょう。

テーマ1:「嘘の代償」

まずシーズン2の最初の方により濃く漂わされているテーマが、この嘘をついたことによる代償×5のパターンを観ることになります。

シーズン1のラストで5人でついた嘘=セレステの夫、ペリーを防衛反応とは言え、ボニーが階段の上から突き飛ばし、衝動的に殺してしまった。

それをそばにいた他の4人、マデリン、セレステ、ジェーン、レナータはそれまでのペリーの憎々しい悪行を知っていたため、自分で滑って落ちた事故と世間に伝え「嘘」をつきます。

それぞれを守るため。いわば1つの大きな「小さい嘘」を共有したことにより、シーズン1のラストでは深く理解し合い、「嘘」で絆ができた5人が海岸を穏やかな表情で歩く姿が強烈な印象として残りました。

しかし、このシーズン2では、その「嘘」で自分たちを守ったつもりの5人の生活や人生がこれでもかというほど、ボロボロに崩れ落ちていく様が描かれていきます。

嘘をつくのよとみんなを先導したある者(マデリン)は自身の過去の浮気がばれ、離婚の危機陥ったり、「そう、誰も押してない!」と嘘を後押ししたある者(レナータ)は夫の過失により家も車もといった全財産を失い、おまけに子守と夫が浮気していたこともわかったり。

そしてペリーを押した張本人、ボニーの人生が一番悲惨で、嘘をついたことにより精神が蝕まれていき、鬱のような状態に陥ります。もともとスピリチュアルな感性の持ち主なので、どんなことでもましてや人を殺めてしまったという嘘をついたことは、精神にも身体にも大きく影響しないわけがありません。

この、ついた「嘘」がじわじわ効いて、次第に周りの大切な人の信頼も失っていったり、疑いの目で見られたり、といった描写が静かに進行する様がなんとも怖いです。嘘はアカン。

テーマ2:「親子の呪縛」

で、特に6話、最終話の7話辺りで思いっきりフューチャーされてくるのが、この親子の呪縛。主に子供が小さい時の子育てについて。

今でこそ様々な論点で論議される、親が子供に与える悪影響について。

デヴィッド・E・ケリーは先ほども述べたように登場人物の性格や人格の形成に重要な影響を与えたものとして、虐待をモチーフにする作家です。

今回のこの『ビッグ・リトル・ライズ2』でも、シーズン1で一番問題のあった人物ペリーという男が、どう形成されていったのか、キッカケはなんだったのかということを、法廷劇の中でセレステが明らかにしていく様は見ていて身震いするほどの出来だったのですが。

要はメリル演じる母親の癇癪やひどい虐待であったと。そういったことが明らかにされるんですね。

それと並行して描かれるのが、ボニーと母親との親子関係。

ボニーが、暴力を振るうペリーを見て、見て見ぬ振りができず、暴力的に思わず突き落とししまったその行動の根本的な原因。ここにも彼女の幼少期の親から受けた虐待の存在があったわけです。

加害者は元被害者。

この言葉がドラマ内で出てくるのですが忘れられません。

ということはモンスターのようだったメアリー・ルイーズもひょっとすれば幼少期に辛い体験をしているのかもしれません。ひょっとすれば…。

ペリーという加害者/被害者。ボニーという被害者/加害者。

メアリー・ジェーンという義理の娘(孫たちの母親)を母親失格として糾弾する女性はかって自分の息子に虐待を働いていた。

悪い人をやっつけたからそれで終わり、だった話では決してなく、その背後に横たわる深い闇にメスを入れ、ある種ユニークな友情で結ばれた女性5人の姿を通しながら、彼女たちの闘う姿を描き切ったこの作品。

ほんとに最終話の7話は観ていて、このドラマの持つこの第2のテーマが表出してグググーっと盛り上がっていき、息もできないような緊迫感とカタルシスと、ラストにはさらに感動を与えてくれました。

見事、というしかありませんでした。

デビッド・E・ケリー、一生付いていきますて。

 

人間ドラマのとびきりのやつを観たい方、かなりオススメです!!

 

 

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