『ぼくのそばにおいでよ』加藤和彦の天才振りが垣間見れる1st傑作ソロアルバム

『ぼくのそばにおいでよ』詳細

本日、10月16日は、加藤和彦(通称:トノバン)の命日です。

トノバン、大好きなんですよねぇ。

日本のフォーク・ソング・グループやグループ・サウンズの鬼っ子、フォーク・クルセイダースを解散し、1969年にリリースした加藤和彦の1stソロ・アルバム、『ぼくのそばにおいでよ』の感想を述べます。

1969年12月1日リリース

M-1 ぼくのそばにおいでよ
M-2 日本の幸福I
M-3 日本の幸福II
M-4 日本の幸福III
M-5 だいせんじがけだらなよさ
M-6 タヌキ
M-7 9月はほうき星の流れる時
M-8 ネズミ・チュウ・チュウ、ネコ・ニャン・ニャン
M-9 アーサーのブティック
M-10 ひるねのミカ
M-11 ゼニフェッショナル・ブルース
M-12 13番街のおもちゃ屋
M-13 僕のおもちゃ箱

モスコの採点

『ぼくのそばにおいでよ』
(5.0)

モスコ

アルバムとしては本意ではなかったため、少しばらついたイメージもありますが…。

なんせ曲が良すぎ。

中でも「日本の幸福Ⅰ」「ネズミ・チュウ・チュウ、ネコ・ニャン・ニャン」「ひるねのミカ」は名曲すぎる!

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『ぼくのそばにおいでよ』曲感想

M-1「ぼくのそばにおいでよ」

フォーク出身のSSW、エリック・アンダースン(Eric Andersen)の曲を日高仁の日本語訳詞で歌った曲。

エリック・アンダースンといえば、1971年リリースの8th(!)アルバム『ブルー・リヴァー』が日本でもSSW愛好家の間で愛されていると思いますが。

彼のフォーク歌手時代、1965年の1stアルバムに収録されていたこの曲(原題:「Come to my bedside」)をカバーするなんて!

1969年当時、エリック・アンダースンを知っている人は、しかもまだSSW前夜のフォーク歌手時代の彼を知っている人が果たして日本に何人いたでしょうか⁉︎

でもね、トノバンは知っている。

彼は、フォークルで当てた莫大な印税を使って、フォークル解散後、二度に渡ってアメリカ旅行&ツアーに出かけています。

その時に、いろいろ現地でレコードを買ったのでしょうね。

まだ日本では全然紹介されてないようなアーティストのレコードを。

いろんな意味で根っからのチートキャラ、トノバンの面目躍如ですね、こーゆーの。

ただ、ただの新し物好きであれば、聴いて終わりだけれど、トノバンのすごいところは、そのまだ新しい刺激を自分のものにまで消化できる才能があるところなのは言うまでもありません。

で、この曲なんですが、元のエリック・アンダースンの曲より、かなりカントリー/カントリー・ロックなアレンジがしてあって、心地いいんですよね。

全編に渡ってスティールギターとかギターもピアノも完全にカントリー/カントリー・ロック・マナーにのっとって演奏されています。

まずそこだけでも、いつでも「本格的に」「他の誰もまだやっていない」ことを「完璧に」あくまで「スマートに」やってのけるトノバンならではの完成度なんですけど、その完璧な演奏にのるのがトノバンの「ヴィヴラートがかった」「ピッチの少し不安定な」「か細いまでに優しい」ヴォーカル、というのがシビれるんですよねぇ、まったく。

たまらないですよ、まったくもって。

M-2「日本の幸福Ⅰ」

この曲のイントロのストリングスの幻想的な美しさにやられたんですよね、最初にこのアルバムを聴いた時に。

なんだこれは!って。

で、トノバンの歌が始まっても、なんだこれは!という美しさの連続で。

TVドラマ用の曲に作ったということですが、それはなんというドラマだったのか…。手持ちの加藤和彦本を何冊かあたってもわかりません。

気になる。本当に使われたんだろうか、とか。

1969年当時のTVドラマ、ということで、日本映画チャンネルの山田太一劇場で観た『3人家族』(1968)(傑作!)や『兄弟』(1969)を思い出しますが、あんな感じの、あんな空気感のドラマなのかなぁ。観てみたい…。

幻想的で儚い美しさのこの曲。とにかく傑作です。

この曲の終わりから、メドレーになってる次の「日本の幸福Ⅱ」への繋ぎも完璧。

M-8「ネズミ・チュウ・チュウ、ネコ・ニャン・ニャン」

この曲で、「加藤和彦は天才だ!」と思うに至りました。

そして、同時に、これは私が前に書いていたブログでも言ったことなんですけど「90年代の小沢健二は65%くらい加藤和彦だったんだ!」とも思いました。

ただ天才同士が呼応し合っている美しい様だけなのかもしれません。

さて、この曲のなにが天才的なのか。

まず、タイトルがヤバいでしょ?

ネズミ・チュウ・チュウ、ネコ・ニャン・ニャンですよ?

あのねのね(よいこはググろう!)の「ネコ・ニャンニャンニャン」でも1979年ですよ?この曲の10年後!

歌詞はフォークル時代からのパートナー、松山猛(この人もまた違った形の天才)です。

で、もっとすごいのが、このヤバいタイトルを、完璧なメロディで歌うんですよ!

サウンドも歌詞も、天国で流れてるような変な浮遊感のある脱力系なのに、なんかここで背筋がゾクゾクきてしまうんですよね、あまりに変で完璧で。

恐ろしい歌です。

M-10「ひるねのミカ」

これはトノバンがマーチンのD45を買って、オープン・チューニングで、クロスビー・スティルス&ナッシュのいい音の鳴りを目指して作った曲だということですが…。

いや、これは素晴らしい…………!!!!!!!

めちゃくちゃ演奏うまいし、トノバン!!!!!

なんか、良すぎて、クオリティ高すぎて。

例えば最高な頃のヴィム・ヴェンダースの映画に使われてたら最高だったろうなぁとか思っちゃう。

『パリ・テキサス』の父・息子で学校から帰ってくるシーンとか、合いそう。

つまりライ・クーダーにも負けてないんですよ、この演奏のうまさと深みは。

1969年の加藤和彦ライ・クーダーは時空をねじまげて、呼応している!

ギター1本で、1969年当時の日本の22歳の若者が、ここまで豊かな映像的な演奏をしてしまえることに感動します。

 

幻の2枚組アルバム『児雷也』について

タイトルにあるこの2枚組の『児雷也』というアルバム。

実はトノバンは、他のいくつかの曲も含めて、2枚組で、このタイトルで、しかもアルバムラストのシングル曲「僕のおもちゃ箱」は入れずに、1stソロアルバムを出したかったのです。

でも会社(東芝)に勝手にタイトルを変えられ、曲を削られ、「僕のおもちゃ箱」を入れられ、ジャケットも勝手に作られ、出されてしまったんですよね。

で、そのことに対する抗議文「児雷也顛末記」としてレコード・ジャケットに掲載されています。

現在、CDには掲載されてませんが、牧村憲一監修、加藤和彦/前田祥丈著のトノバン愛を感じることのできる名著『エゴ、加藤和彦、加藤和彦を語る』に全文掲載されていて読むことができます。

いわば、幻の名盤なんですよね、その『児雷也』って。

その加藤和彦がぎゅっとパックされている『児雷也』、めちゃめちゃ聴いてみたかったですよね。

この本人が不本意であった『ぼくのそばにおいでよ』として出されたアルバムでもその傑作の香りはぷんぷん漂ってきますからね。

曲紹介で上げた4曲以外でも、いい曲いっぱいあるんですよ、このアルバム。

きっと東芝に勝手にオミットされた曲だって、いいのあるはずですよ。

あーもったいない。あー聴きたい。

いつの日か聴ける奇跡を夢見て。

それまで、この『ぼくのそばにおいでよ』をずっとずっと聴き続けるのです。

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