『女の園』木下惠介 感想。美しいロケシーンにじりじりくる閉塞感。そして高峰三枝子の悪女っぷり。

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モスコ

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今回は木下惠介作品の社会派映画、『女の園』を観ました!

 
 

原題:女の園 (1954)

監督:木下惠介

上映時間:141分

あらすじ

阿部知二の『人工庭園』を木下恵介が脚色・監督し映画化。全寮制の女子大学を舞台に、民主主義に隠れた日本の封建主義を描いた力作。京都にある正倫女子大学は、厳しい規律で女性を育成することで知られていた。新入生の出石芳江は恋人との文通を許されず、滝岡富子はテニス友達の男性との交際が発覚し停学処分となってしまう。しかし上級生の林野明子は学校の後援者の娘であるため、優遇されていた。ついに学生たちの不満が爆発、騒ぎを起こし、学生たちは罰を受ける。しかし芳江だけはなぜか軽い処分で済んだのだった。

 YAHOO!映画より

 
 

モスコの採点:★★★☆  3.5点 / 5点満点
1954年は木下惠介の年!オールスターキャストで魅せる見応えアリの社会派劇

 
 

スタッフ

  • 製作:山本武
  • 撮影:楠田浩之
  • 美術:中村公彦
  • 音楽:木下忠司
  • 脚本・監督:木下惠介

特にロケシーンの撮影がきれいです

コントラストがはっきりとしていて、陽の当たる山の木々やお城などは明るく、手前を歩く男女は暗い。

そこがまたこの作品の登場人物たちの暗さを物語っているようで、いいですね。

久我美子が奈良のええとこの子で、実家は大きなお寺みたいな建物なのですが、その実家の瓦屋根がとても美くしく白黒画面に映えて、しばし目を奪われます。

撮影は木下映画の固定されたスタッフ”木下学校”の楠田浩之(くすだひろし)です

そして監督、木下惠介。

ノリにノッてる時期で、この作品は1954年のキネマ旬報のベスト10の堂々2位を獲得しています。

しかも1位は同じ木下惠介作品の傑作『二十四の瞳』です。

1954年は木下惠介の1、2フィニッシュの年だと覚えることにします。

出演者

  • 五條真弓:高峰三枝子
  • 出石芳江:高峰秀子
  • 滝岡富子:岸恵子
  • 林野明子:久我美子
  • 下田参吉:田村高廣
  • 下宿の小母さん:望月優子
  • 校長:東山千栄子
  • 敦賀の小母さん:浪花千栄子
  • 平戸喜平:金子信雄
  • 服部文江:山本和子

とにかく感情移入しにくいキャラクターたちばかり in 女の園ですが、やはり主演:高峰三枝子のイヂワル先生振りが際立っています。

女子学生に対してもそうですが、さらに同僚である金子信雄に対して絶対言い負かされずに、嫌味が湯水のように出てくるところとか、そのあまりにも徹底したヤな女振りがかえってかっこよく映るほど。

しかもそれが自身の若い頃のうまく行かなかった恋愛からきててヒスってるらしく、かなりの哀れな女なのですが、こんな女をなんともスッとあくまでも自然に演じる高峰三枝子が本当に素晴らしいです。

他にも高峰秀子岸恵子、久我美子と豪華な顔ぶれの火花散る演技が観ていて楽しいです。

そして山本和子は特徴的なはっきりしたお顔立ちとキリリとした演技が好印象でした。

また田村高廣(田村正和のお兄さん)のデビュー作でもあり、”シュッとした関ジャニの村上くん”、みたいな、いい具合の二枚目振りです。

逆に岸恵子に言いよる役で田浦正巳が少し出てくるのですが、小津安二郎『東京暮色』の役柄を思い起こさせるような情けないナヨナヨ大学生を演じており、昔の日本映画ファンとしてはニヤリとさせられます。彼、こんな役ばっかり?笑

あとは浪花千栄子がいつもの感じで出てくるシーンがあり、ホッと一息ついて笑うことができました。

ロマンチック性神経衰弱

この見出しの”ロマンチック性神経衰弱”は高峰秀子が彼氏である田村高廣に言われるセリフです。

けれど、この言葉はこの映画全体に通底している性格でもあるように思われてきます。

この映画の女性は見ていて息苦しくなるほど、重くて暗い。

ジメジメとして湿度が相当高い。

自らの出自の運命に翻弄され、抗うどころかむしろ酔ってるような、そんな女性たち。

この映画のデコちゃん(高峰秀子)なんてずっと

「私、かわいそう。ただ勉強したいだけなのに、ただあの人を愛しているだけなのに、みんなが邪魔をする。ウワーーー!」

という感じで、叫んでのたうち回ります。

同情こそすれ、どうにも感情移入しにくい人物…。

でもそれは全部わざと。

観ている間中、重苦しい気持ちになるのですが、だからどうした。

それだけ人間の、女性の持ついやらしさやずるさ、そして真摯な想いなどを赤裸々に描いているのです。

ここである疑問。

木下惠介は女性嫌いなのではないでしょうか。

彼のセクシャリティには色々な説があるようですが、どうも、異性が持ついやらしさ、というよりはある種「同族嫌悪」的な描き方のような感じがします。

男性監督なのに、まるで女が女の嫌なとこをふんだんに描いているような感覚。

モスコ

木下監督は感覚がかなり女性的なのでしょうね。

ただ、”お母さん”の描き方は愛情たっぷりで秀逸。

田村高廣の母の「私は老い先長くないから、人からどう思われたっていい。あんたの思うように好きに生きなさい」と、息子を応援するシーンには思わずジワリときました。

アメリカ映画『今を生きる』と似ているところ

女子大学生たちの自由や個性も奪う大学側もひどいですが、高峰秀子の父親もそりゃあ封建的なものでひどいんです。

そんな高圧的な父親と娘・高峰秀子の行く末を思う時…

ロビン・ウィリアムス主演の『今を生きる』(1989)監督:ピーター・ウィアー

と似たものを感じて興味深かったです。

共通項は厳しい父親と厳しい全寮制の学校。

封建主義がひとの個人主義を奪う時、悲劇は起きてしまう。

時代的にもなかなか逃げ場がない。

ただ『今を生きる』では、その逃げ場として「死せる詩人の会」があったわけですが、この『女の園』の逃げ場は弱い。

自分と同じ若い大学生1人(田村高廣)なわけです。

高峰秀子にジリジリねっとりと加速して迫ってくる閉塞感もこの映画の見どころの1つです。

当時の京都や姫路など関西のロケシーンも見どころ

ところでその高峰秀子の父は呉服屋の出石屋の旦那という設定ですが、その実家の呉服屋が出てくるシーンでは、実際に姫路にあった呉服屋の西松屋、が使われているそうです。

そう、現在の子供服の西松屋ですね。

もともとは姫路の呉服屋さんだったわけですね。

モスコ

子供が小さい時お世話になっていた西松屋さんですが、姫路が発祥とは知らなんだ〜。

あとは、高峰と田村の姫路城デートシーンも印象深かったです。

あの去りゆく汽車を姫路城から見送り、お互いに手を振るシーンは、高峰の不安定さがスリリングさを呼び、また実際にはお互い見えていない!ということがショットの重ね方でわかり、私は今映画を観ている!という興奮に包まれました。

そのほかには、高峰三枝子と久我美子がやりあうシーンで京都の渡月橋が出てきますが、このシーンもその内容のドロドロとは真逆の背景の山がとても美しかったです。

『女の園』まとめ

先ほども書きましたが、1954年のキネマ旬報のベスト10、日本映画編では、堂々の2位、しかも1位は同じ木下恵介作品『二十四の瞳』です。

  • 黒沢明『七人の侍』(3位)
  • 溝口健二『近松物語』(5位)、『山椒太夫』(9位)
  • 成瀬巳喜男『山の音』(6位)、『晩菊』(7位)

という、そうそうたる監督たちの名作群を押しのけてのこの木下人気!

木下作品は叙情的なものと社会派的なものに別れると言われていますが、この1954年に彼は叙情派の代表作として『二十四の瞳』社会派の代表作として『女の園』を作りあげたとも言えるでしょう。

表代表作:『二十四の瞳』

裏代表作:『女の園』

みたいな。

重苦しい題材をジリジリねっとりと描き切った演出、素晴らしい撮影や演技で、かなりの見応えに満足しつつも、もう少しコンパクトにまとめられていたら…と思わずにはいられません(上映時間は141分)。

とはいえ、私も木下惠介という人物の恐ろしさは少し知れたのではないかと思います。

まだまだ「松竹プラス」で観て行きたいと思います。

モスコ

この映画で一番恐ろしいのは学校一の偉いさん・東山千栄子の威圧感たっぷりのでかい肖像画かも〜。ひー。

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