椎名林檎『三毒史』全曲感想!前半

shiinaringo




その徹底的な構成美で埋め尽くされたこのアルバムの完成度たるや!

ジャケットで半分獣な林檎嬢ですが、ほんっとこのイメージ通り!

無敵さとほんのちょっぴりのお茶目さと、そして余りある才能と貫禄を感じさせる、超重量級のド迫力アルバムです。

三毒史 / 椎名林檎

2019年5月27日リリース

M-1 鶏と蛇と豚 椎名林檎
M-2 獣ゆく細道 椎名林檎と宮本浩次
M-3 マ・シェリ 椎名林檎
M-4 駆け落ち者 椎名林檎と櫻井敦司
M-5 どん底まで 椎名林檎
M-6 神様、仏様 椎名林檎と向井秀徳
M-7 TOKYO 椎名林檎
M-8 長く短い祭 椎名林檎と浮雲
M-9 至上の人生 椎名林檎
M-10 急がば回れ 椎名林檎とヒイズミマサユ機
M-11 ジユーダム 椎名林檎
M-12 目抜き通り 椎名林檎とトータス松本
M-13 あの世の門 椎名林檎

考え抜かれたアルバム構成

2014年に発表された前作『日出処』以降にCMやドラマタイアップなどシングルとして切ってきた曲が何曲か収録されていますが、彼女のインタビューによると、その時からその曲がアルバムの中ではどの役割を担わさせるのかを考えているとのことです。

その言葉にうんうんうなづき納得する私です。

このアルバムに気まぐれに収録された曲は1つたりとてありません。

いわんや既発曲の寄せ集めアルバムでも、ない。

1つ1つが必要不可欠な構成要素であり、曲順もかなり熟考されていると強く感じます。

頭のM-1 「鶏と蛇と豚」と最後のM-13「あの世の門」は明らか対になっているし。

もっと言えば全体がちょうど真ん中M-7「TOKYO」を境にシンメトリーに対になっていたり。

代わりばんこにソロ曲と男性アーティストとの連名曲が並んでいたり。

連続する2曲が、その終わり方と始まり方の繋がり方に徹底的にこだわっていたり。

彼女、こんなに形式主義だったんだなぁ。

もうピシーッと気持ち良いまでに整然と並んでいる。

ここまで徹底されると平伏さずにいられません。

このアルバムは曲単体で聴くのではなく、アルバムとして初めから最後まで聴くべきアルバムです。

彼女の意図した意匠を少しでも多く味わい尽くすために。

M-1「鶏と蛇と豚」

般若心経の読経にマーチとスクラッチのリズムに乗せたイントロで始まるのは、このアルバムのジャケットのイメージにぴったりな、林檎流戦いの始まりを告げる不穏なファンファーレ。

タイトルの「鶏と蛇と豚」とは仏教での三毒「貪瞋痴(とんしんち)」をそれぞれ表す動物のことを指しています。

  • 貪(とん) むさぼり 欲     鶏
  • 瞋(しん) いかり にくい    蛇
  • 痴(ち)  おろかさ 愚痴    豚

この三毒は、仏教で克服すべき根本的な3つの煩悩、という意味です。

むさぼりに、いかりに、おろかさ…。うへぇ…。耳が痛い。

こういった三毒にまみれるのは人間の性。

しかしここに戦いを挑むのもまた人間。

だからこのアルバムジャケットの林檎嬢は鎧を身にまとっているのでしょう。

この曲のミュージック・ビデオでは、この曲の日本語歌詞とサブタイトルが見れます。

その日本語歌詞に要注目なのですが、サブタイトルの方も見逃し厳禁。

いわくGate of Living

つまりこの世の門。

「この世の門」から始まり、「あの世の門」で終わるこのアルバム。

林檎ちゃん自身もインタビューで「揺り籠から墓場までが直接的モチーフになっている」と語っている通り、これは人の生と死の一生にまつわる作品。

だからこんなに重いのかー。

しかも代わりばんこに男性とデュエットしないといけなんて。

私の人生、その時々で男が必要なのよー

でも取っ替え引っ替え乗り換えるわよー

と、ウィンクしながら林檎ちゃんが言ってるみたいで、面白いと思いました。

何はともあれ、アルバム丸ごとを1曲で象徴する見事すぎるリードトラックです。

M-2「獣ゆく細道」椎名林檎と宮本浩次

前の曲とこの曲のつながりが、サウンド的にも歌詞的にも実に上手い。

スッとこの今や耳馴染んだ曲に導入してくれます。

悪魔の顔をした天使のような、はたまた獣のような人間がこの世にまず一歩足をどどーんと突っ込みました、という画が浮かんでくるようなこの曲。

昨年の紅白歌合戦で披露していたことも記憶に新しいですね。

エレファント・カシマシの宮本浩次が半分獣の持ち味全開で暴れまくるのが爽快です。

気遣っているようで気遣わせているんじゃあ 厭だ

自己犠牲の振りして 御為倒しか とんだかまとと

謙遜する前の単に率直な態度を誇っていたいと思ふ

さう正体は獣

ここの歌詞にこの曲の真髄あり、と私は思います。

この、彼女がデビュー当時から持つ、真っ当な正直さが好きです。

借り物の命がひとつ 厚かましく使ひ込むで返せ

えぇ、えぇ、そうしましょう。

思う存分使い込んでお返しすると致しましょう。

M-3「マ・シェリ」

この一見ヘビィーでダークなアルバムで、なぜこの資生堂のシャンプーCMのタイアップ曲が共存できるのか?

できるのです。

林檎嬢が東京事変のメンバーと共に、CM尺からフル尺へこのアルバムにふさわしく華々しく変身させました。

M-4 「駆け落ち者」 椎名林檎と櫻井敦司

どちらもファイナルファンタジーから抜け出てきた方ですよね…??

この重低音のイントロ、かっこいい。

CGで人間戦車(櫻井氏と林檎嬢のそれぞれのでっかい顔付き戦車2台)がドドドーって街を壊しながら進んでく感じ(あくまで個人的イメージ)

櫻井敦司(BUCK-TICK)とのツインヴォーカルの鳴り、まじ気持ちいいです。

※5/31(金)追記

本日放送のMステはご覧になられましたでしょうか?

この曲をこの2人で披露していましたが…かなりやばかった!かっこよくて!

他と一線を画する圧倒的なパフォーマンスでしたね〜。

うちの小学生息子も「令和になってから、一番かっこいい曲聴いた…!」と興奮していました 笑

M-5「どん底まで」

2015年に発表されたシングル「至上の人生」のカップリング曲として世に出た時はBPMが少し遅いヴァージョン。

つまりアルバム・ヴァージョンはBPMが上がっていて、オフェンシブになってて若くなってて、これまたかっこいい。

ギターがぎゅんぎゅん鳴ってて、林檎嬢の声が気持ちよく伸びてく、デビュー当時を思い出させるようなロックンロール曲です。

M-6「 神様、仏様」椎名林檎と向井秀徳

林檎ちゃんの向井氏に対するラブレターが15年越しに叶ったという曲。

しかし「声データください」というラブレターって 笑

でもそこまでずっと彼女が思っていたという意味は曲を聴くと如実に分らされますねぇ。

このライムというか掛け声というか、耳に残る残る。

その昔、フジロックで見かけた向井氏はいい意味で普通の兄ちゃんだった…。

ナンバーガールちゃんと聴いたことないからそう思ったんですね、すみません(´;ω;`)

彼の凄さをやっと知ることが少しできました。

M-7「TOKYO 」

折り返しの、アルバムど真ん中に位置する重要曲。

ジャジィーなピアノのイントロが、これまでとは全く空気を変えて、この曲だけ真ん中で宙に浮いている。

そしてこのバックの演奏すごい…。

歌詞はというと徹底して孤独。

どことも誰とも繋がらないこの命

とか

どこへも誰へも続いていないこの道

とか。

こういう時が人生にはある。

こう思って軽く絶望する時がある。

どんな最期を迎えて死ぬんだろう

変わらず誰にも甘えず

ずっと1人なら長いわ

高が知れた未来

短く切り上げて

消え去りたい

飲み込んで東京

さて、アルバムはこっから後半がまたすごいので、また続きは次回書きたいと思います…!

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