『破れ太鼓』木下惠介 感想。笑って泣けて心温まるコメディの傑作。

アマゾンプライムの「松竹プラス」チャンネルで、絶賛 ”木下惠介” 発見中のモスコです。どうも。

そして、いよいよ傑作の誉れ高いコメディ『破れ太鼓』を観ました!

モスコ

果たして本当に傑作だったのでしょうか〜?ワクワク

 

原題:破れ太鼓 (1949)

監督:木下惠介

配給:松竹

上映時間:108分

あらすじ

一代で財をなした津田軍平は、妻や子供に対して傲慢で、何かにつけ怒鳴り散らしていた。家族は当然自分を尊敬していると思い込んでいたが、長男は父の会社を辞めようとしているし、長女は父が進める縁談をよそに若い青年画家と愛し合っていた。軍平の高圧的な態度が家族を支配していたが、ついに長男と長女が家を出てしまい、さらに妻とその他の子供たちも軍平の前から去ってしまった。そして軍平の会社は資金繰りが悪化し、行き詰まってしまう。
 

allcinema 映画より

 
 

モスコの採点:★★★★☆  4.5点 / 5点満点
笑って泣けて。フランク・キャプラばりの大傑作ハートウォーミングな家族劇!

 
 

 スタッフ・解説

スタッフ

  • 製作:小倉浩一郎
  • 脚本:木下惠介、小林正樹
  • 撮影:楠田浩之
  • 美術:中村公彦
  • 音楽:木下忠司  

結論から言うと、噂にたがわず、かなりの傑作でした!

アメリカの映画監督、フランク・キャプラの作品には以下のような特徴があります。

  • 楽天的なまでの理想主義
  • 人間というものを鋭く捉えた上での、心温まるヒューマニズム
  • 笑えるギャグの数々

この『破れ太鼓』も、こう言った特徴を持ちつつ、それらをすべて計算された脚本でスッキリと見せる木下の才気あふれる手腕が見事。

キャプラ『我が家の楽園』(1938)や『素晴らしき哉、人生!』(1946)をオマージュしながらも、同じ1本の映画として決して引けを取らない傑作と言っていいと思います。

モスコ

この時、木下惠介37歳。若いけれどしっかりした作風がそこにもうありました

伏線回収もばっちしだし、セリフも笑えるものが多く、これはまず小林正樹と共同で書いた脚本が素晴らしいのだと思います。

 出演者・解説

出演者

  • 津田軍平:阪東妻三郎
  • 妻・邦子:村瀬幸子
  • 長男・太郎:森雅之
  • 次男・平二:木下忠司
  • 三男・又三郎:大泉滉
  • 長女・秋子:小林トシ子
  • 次女・春子:桂木洋子
  • 四男・四郎:大塚正義
  • 叔母・素子:沢村貞子
  • 野中茂樹:宇野重吉
  • 父・直樹:滝沢修
  • 母・伸子:東山千栄子
  • 経理部長・木村:小沢栄

阪東妻三郎(田村高廣、田村正和のお父さん)の主演作品。通称:阪妻(ばんつま)。

傲慢で独善的で自分のことしか考えていない最低親父を、どこか憎みきれないキュートさで演じています。

この阪妻出演をきっかけに、木下は息子である田村高廣と知り合い、その後『女の園』で俳優として木下作品でデビューさせることになります。

『女の園』について合わせて読む↓

森雅之は30歳にもなって、口うるさい父親になかなか自分の意思を伝えられない気弱な、その分心優しい面を持つ長男・太郎役。

このなかなかに情けないキャラクターも演じられるし、ニヒルな2枚目もできるし、その幅が広くて奥も深い演技が強みの森雅之が映画に華を添えています。

宇野重吉、東山千栄子、滝沢修の夢見る芸術一家、これがまた忘れられない心に残る演技でとてもよかったです。この一家にまつわる全てのシーンは思い出しただけでも胸があったかくなります。

そしてここで注目ー!

なんと、監督の木下惠介作品の『楢山節考』以外の音楽をすべて担当している、実の弟、木下忠司が俳優としてこの映画に出演しているんです!!

1940〜50年代の木下映画のテロップでその名をみるたび、そしてそれから年月が経ち、木下惠介の晩年の活躍の場であったTVの連続ドラマ『木下惠介アワー』(脚本:下積み時代、木下の助監督をしていた山田太一!)などのテロップでも変わらずそこに名前を見る木下忠司。

あまりにも長い間、徹底して木下作品の音楽を担当しているため、もう半分ほんとに実在する人なのかしら?いろんな人の芸名を一括して音楽:木下忠司としてるんじゃないかしら?なんてちょっといぶかしく思っていたけど…

モスコ

実在してましたー!

ピアノを弾いて歌う姿を観れるだけでも驚きなのに、この忠司演じる次男が後半、かなり重要な役割を演じるわけになっており、ちょっとした嬉しい驚きでした。そこは後述するとして…。

感想

人はやり直せる

笑いに包まれた映画ながらテーマは「人は過ちを犯しても、やり直せる」というシリアスなもの。

映画のオープニングに女中の うめ(賀原夏子)が、主人の横暴さに我慢ができず辞めていくところから始まります。

モスコ

このオープ二ングの賀原夏子のちょっと一本気で滑稽なコメディエンヌぶりがおかしくて、掴みはかなりオッケーなのです!

そして映画のエンディングでまたこの うめ が、辞めた時の威勢はどこえやら、新しい仕事(キャバレーの女)に失敗し、しょぼんとして「またこちらで使ってもらえないでしょうか?」と家族の元へ訪れるわけです。

そこで自らの横暴さを反省した主人は笑って再び雇うのでした。

つまり、女中の うめ と主人公の2人のあやまちを「間違いを認め、やり直す」ことを、このシーンで二重に描いているのです。

この対となったオープニングとエンディングのように映画の全編に渡って、無駄で冗長な描写などがなく、すべてが考え抜かれており、収まるべきところに収まっているという巧さ、脚本の見事さがあります。

木下惠介の映画的な感性と、アツイ人間性

人に暴力を振るう人、いじめる人、威張る人、支配しようとする人のバックボーン、つまり「なぜそのような人間になったのか」というようなことを、阪妻自身にカレーライスを食べさせながら思い出させる回想シーンで、そのことをほとんど映像で示した木下の映画的な感性と、心理学的なことをこの時代にそこまで突っ込んで描いたところに、時代を飛び越えた人間性を感じました。

そして、私が一番感動したポイントは、木下忠司演じる次男の存在と描き方です。

それはクライマックスシーンに突如訪れます。

次男は、ほとんどラストまで長男や長女の影に隠れ、フューチャーされる場面といえば父親を揶揄するオリジナル・ソング「破れ太鼓」をみんなで歌うときに伴奏する、くらいだったのに…。

阪妻のあまりにもの横暴振りに耐えきれず、妻であり兄弟たちの母親である村瀬幸子が家を出て行くシーン。

母親も、そして長女も出て行くと言い、さらに次女と高校生らしき野球青年の四男も感情的になり母親と一緒に出て行く!と泣いています。

今までの家族に対するひどい仕打ちを観ていた身としてはこう思いました。

モスコ

よっしゃー、ここで全員出て行け〜!
そして家族のありがたみを知って反省する展開になれー!

ですが、驚いたことにこの売れない音楽家の次男は、母親に言われるまでもなく、その家に残り父のそばにいると言うのです。

医学生の身である三男もそうだったのですが、しがない売れない音楽家である自分に生活力がなく、実家にパラサイトさせてもらっている申し訳なさや恩義を感じているのです。

そしてわかっているのは自分の置かれている状況だけではなく、自分の父親のこともよく見てわかっていたのでした。

なんと妻も出て行き、自分の会社も倒産し、ズタズタになった父、怖くて怖くて話すのも恐ろしかった父、阪妻に優しく諭すのです!

「僕も”なんとなく”お父さんが好きだし、お父さんも”なんとなく”子供のことが好きなはずだよ」

ところが阪妻は反論します。

「ばか!子供が”なんとなく”好きな親があるか!

 子供のことは”一番”すきなんだ!」

モスコ

このセリフ、泣けましたねぇ

このシーンで、木下惠介はやっぱすごい!!と思ったわけです。

父親も、次男も、それまでのキャラクター設定とは明らかに正反対のようなもので、ある種ファンタジーになっているにも関わらず、圧倒的な説得力とリアリティを伴って完全に納得できる仕組みになっているのです。

映画が映画の枠やあらゆるものを超えて、こちらの胸に直にズドンと迫ってくるような、そんなシーンを持つ映画が私は大好きなのですが、この映画の父と次男のシーンは間違いなく、私の胸に迫ってきました。

あと個人的な思い出話しになるのですが…。

阪妻演じる主人公の傍若無人振り、自己中心振りが、私が子供の時に一緒に住んでいた祖父にそっくりで、なんとも苦笑いするやら懐かしいやら。

阪妻が家に帰るたんびに隣の犬が激怒して吠えまくるというギャグと、その犬の鳴き声を呼び鈴呼ばわりするギャグがあります。

阪妻のこの映画最初のシーンは吠えられながら(犬の激しい吠え声のみ聞こえる)家に帰ってきた場面で、最初のセリフが「あんな犬、殺してしまえ!」で笑えるのですが、うちの祖父もよく犬に吠えられていて、杖を振り回しながら「叩っ殺すぞ!」とわめいていたことを思い出しました…。

うちの祖父もどうしようもない人でしたが、どこか妙に人間的で情に厚くお茶目な面があり、憎みきれないところがありました。

そう、この映画の阪妻によく似ていました。

これまであまり観る機会の少なかった木下作品をまとめて観て、自分の中にどういった監督か、この機会にぜひ刻んでみようと思っていたのですが、この1本でかなり強烈にその才能を感じました。

小津安二郎成瀬巳喜男溝口健二と並び得る監督なんだということがよ〜くわかりました。

モスコ

木下惠介はすごい!『破れ太鼓』も素晴らしい作品でおすすめです!

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